手造りの温もり、風合いを感じる
時代を超えて受け継がれる麻織物(奈良晒)を訪ねて
中川政七商店

$T2eC16RHJHQE9nzEzNWyBQfostvl,Q~~60_12 (茶巾 Chakin linen cloth)

茶道の点前や食器拭きとしても利用される茶巾。
麻で織り込まれた布ですが、一部の高級品については
機械を使わずに現在でも人の手(手紡ぎ、手織り)によって丁寧に作られています。

麻織物の中でも奈良晒(ならざらし)と呼ばれる最上級品は
奈良で生産され、特に*晒し技術が他の産地に比べてより秀でており
また、その品の良さから江戸時代では幕府の御用品とされたことによって
大きく発展したとされています。

*晒しとは
織りたての布(生糸)は薄茶色をしています。
これを水洗い、灰汁をかけ、釜炊き、乾燥などの工程を何度も繰り返すことにより
美しい白い布になります。この工程を晒しと言います。


a5IMG_6268 (写真左 奈良晒/写真中央 晒し工程の布/写真右 生糸)


日本では武家社会が終焉し、麻から綿へと織物の主体が変わっていく中で
麻織物の生産地は衰退の一途を辿り、高度な技術を持つ職人達もみるみる少なくなっていきました。

また、多くの産業が機械化へと時代が進む中で
あえて時代に逆行し、手仕事を大切し、貴重な麻織物の技術を伝承し
守りぬいてきた会社があります。


奈良晒の製造販売にて1716年に創業し、間もなく300周年を迎える中川政七商店
創業以来、手紡ぎ手織りの麻織物を扱い続け、近年は伝統工芸をベースした数多く製品を製造販売されています。

今回、奈良晒の手紡ぎ手織り体験が出来る機場(はたば)をオープンされたとのことで
取材に伺わせて頂きました。

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(当時の蔵の鍵がそのまま残っております、木札には10代経営者であり、途切れつつあった奈良晒製造の復興に尽力した中川政七の名前が書かています。)

a4IMG_6266 (想像はしていたのですが、実際の手織機を見て驚きました。昔と変わらない手織機が今も健在なんです。)


以前、布蔵として利用されていたスペースを整備し
麻の手紡ぎ手織り体験を出来る施設となっています。
奈良晒の生産工程は多岐に渡り、多くの人の手と時間を要します。

中川政七商店さんでは、一部の商品については現在でも江戸時代と変わらない製法で作っているそうで約24mの生地を織るのに、熟練した職人でも10日間掛かり
また、24mの生地に必要な糸は1.2kgで、その糸を紡ぐのにも24日掛かかるそうです。

これだけの、手間暇を掛けるからこそ
機械作りとは異なる温かみ、風合いを持つ織物に仕上がるようです。

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麻布の原料となる麻苧(あさお)
こちらを指で紡ぎ、細く紡いだ麻苧を結ながら一本の糸にしていきます。

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機械で紡績された糸を使い、機械の織機で織ることも均一の商品を
大量に生産することが出来る必要な技術ですが
手でつくられた糸は、素材本来の良さが残り
作り手の技とも呼べる手仕事と合わさることで独特の風合いが宿っていきます。


また、手紡ぎした糸は、手織りの織機でしか織ることが出来ず
そのため、非効率ではありますが、現在も昔と変わらない製法を守られています。




手造りの陶器と近いものがございますが
個性を持ったそれぞれの織物は
使い込むことによって、より馴染み、他にはない自分だけの織物(道具)になっていきます。

数百年前と同じ製法で作られている奈良晒
現在では伝統産業として衰退しておりますが技術伝承として、わずかですが生産が続けられています。温かみ、風合いのあるアイテムとして、次の時代へ受け継がれて欲しいですね。


aIMG_6270 取材協力頂いた中川政七商店の福島朋子さん    
店舗運営、麻の手紡ぎ手織り体験でのご案内を担当されています。
奈良晒にまつわる歴史や、代々続く中川政七商店の想い、魅力について色々と教えて頂きました。


麻の手紡ぎ手織り体験の案内はこちら

中川政七商店 本店
日本全国の素材や技術と現代の感覚を融合したテキスタイルアイテムを数多く販売されています。
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所在地:奈良県奈良市元林院町31-1電話番号0742-24-2267
Web site http://www.yu-nakagawa.co.jp/

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